【事例2】リフレクション(授業の振り返りプレゼンテーション)常翔学園高等学校 田村直宏(タムタム)
この「リフレクション」を「探究」に入れて良いかどうかは分からないが、新しい学びのスタイルを開発したという意味と、生徒が実践する際に探究をせざるを得ないという部分で、探究実践の中に入れさせていただく。
「リフレクション」とは?
学びのあと、振り返ることにより学びは深まる。この振り返りの事を一般的に「リフレクション」と呼ぶ。が、ここでは特に、イベントがあった後にその内容を即興で面白おかしく振り返り披露する技を、「リフレクション」と呼ばせていただく。3月のロイロ超スクールで、田村がその授業をさせていただき、開校式と卒業式で実際に披露させていただいたので、ご覧いただいた方にはご理解いただけると思う。
簡単に手法を説明すると、イベントに参加しながら、キーワードや印象的な出来事をロイロノート・スクールに80ptで書き留めていく。そして、イベント終了後に紙芝居の様に文字のカードをめくりながら、喋りで言葉を足してその会を振り返る。
「リフレクション」の効果
リフレクションを聞く事により、他の参加者はそのイベントを2度経験でき、かつ自分の中の記憶と照らし合わる事により、その参加者にとってのポイントがより鮮明に記憶になって、学びを深めることができる。
リフレクションをする良さも、非常に大きい。イベント中はイベントの中身も聞きつつ、ポイントを取捨選択しながらカードの作成をすることになる。知らない用語は検索して調べることも並行して行うので、マルチタスクをこなす練習になる。カードの文字は大きいほど伝わるので逆に文字数は制限され、限られた字数の中での表現力が身につく。そしてプレゼンテーションをする度胸が身につき、話し方も上手くなっていく。
生徒によるリフレクション
2019年度、高校3年の物理の授業で3クラスに「生徒リフレクション」を取り入れた。50分の授業のうち、授業の時間45分、ラスト5分を「生徒リフレクション」を行ってもらう。リフレクション担当の生徒は、授業中にリフレクションの資料を作り、授業が終わると同時に前に出てきて自分のiPad(常翔学園では生徒全員が入学時にiPadを購入する)をスクリーンに映して、リフレクションを行ってもらった。
驚く事に、ほとんどの生徒が授業終了直後に「できる?」と聞くと「はい」と答えて前に出てきてリフレクションを始めることが出来、上手く1~3分程度で話す事が出来た。生徒にはリフレクションは出来ないかもと思っていたが、完全に間違っていた。生徒の可能性は無限大である事を実感した。カード作成が簡単にできるので、是非沢山の学校で実践してみてもらいたい。
生徒によるアレンジ
生徒達はただリフレクションをするだけでなく、発表の工夫でクラスメートを楽しませようとしていた。
・その日の授業に名前の出てきた物理学者の肖像画をWebで拾ってきて紹介
・iMovieで作ったリフレクションの予告編を上映してから、本編に入る
・朝鮮中学校出身者がハングルでリフレクション
生徒の感想
最終授業で実施したアンケートで、「物理の授業で印象に残っていること」に8割の生徒がリフレクションと答えていた。中には、「リフレクションを作った日は、ノートが取れなくて嫌でした」という生徒もいたが、多く生徒は、自分がリフレクションをした時も、クラスメートのを見た時も、楽しんでくれていたことが分かった。高校3年の物理の授業をクラス全員が楽しんでいたのは、珍しいと言えるのではないだろうか。生徒の中には、「僕、弟子になってリフレクションを広めて行きますよ」という者もいた。
生徒リフレクション実施の為の工夫
誰がリフレクションを行うかは、前の時間にリフレクションをした生徒が指名する事にした。そして指名されてもパスをしても良いルールにした。これにより、人前で話すのが苦手な生徒、物理が全く分かっていない生徒に出来なくて恥ずかしい思いをさせずに済んだと思う。このルールのお陰で、みんながリフレクションを楽しむことが出来たと思っている。
まとめ
リフレクションに正解はなく、個人により、クラスによりカラーが出た。そして、みんなが楽しくできる活動となった。これはまさに探究的な活動であったと言えるのではないだろうか。
この「リフレクション」を、ロイロノート・スクールを導入している日本中の学校に広まって行って欲しいと思う。